Skip to main content
Sustainable Innovation

【Column】「問題解決力」から「課題形成力」へ~土台となる「共感力」

【Column】「問題解決力」から「課題形成力」へ~土台となる「共感力」
Share this article:

2021.10.13

インパクトでは、創業者David Williamsの「ビジネスはコミュニティと共存すべき」という強い信念のもと、1985年の創業時からCommunity Action Learning(CAL)の開発に取り組んできました。

CALは、インパクトジャパンが今年開発した次世代リーダー開発プログラムTHOUGHT LEADERSHIPのメインコンテンツです。CALをプログラムの中心に据えた背景には、時代の変化の波があります。社会を取り巻く環境が複雑性を増し続け、地球環境の危機が明らかになった今、企業に対しても様々な社会課題解決への取り組みが求められています。企業の繁栄と社会課題の解決は、長い間相容れないものと捉えられてきました。その2つのベクトルが今、SDGsという共通言語のもとに加速して合意点を探求するフェーズに入っています。

時代が変われば、求められるリーダーシップの在り方も変わります。これまでは、リーダーとしての問題解決力の開発に焦点があたってきました。それを身につけるため様々なトレーニングが市場に溢れていました。それが今、問題を発見する力・問う力、つまり「課題形成力」にシフトする流れが一般的になりつつあります。

昨年出版された『問題発見力を鍛える』の中で、著者細谷功氏は、「なぜ」という問いが、表面の個別事象ではなく、その背景を深掘りして真の問題へ向かう手掛かりを与える。変化の激しい時代に、正解を探す働き方は受動的だ、と指摘します。そして、今こそ自ら新たな問題を見つける能動的姿勢が必要である、と言います(*1)。

実際、私たちの持つ問いの多くにはAIが答えてくれるようになりました。知恵や実例は積み重なり、分析され、世の中は解決策飽和状態です。

また山口周氏は、20世紀後半の数十年は【オールドタイプ】:問題が与えられるのを待ち、正解を探す人たちの価値が高かったのに対し、今は【ニュータイプ】:問題を探し、見出し、提起する人たちが求められていると述べています(*2)。

CALはまさにこの、問題を探す「課題形成力」にフォーカスしたプログラムです。最終的には、目の前のコミュニティの人たちの抱える問題を解決するための提言をまとめます。

しかし、コミュニティから参加者に伝えられる課題は、目につきやすい表層的なモノとなりがちで、「なぜそれを解決したいのか」の「なぜ」の部分が抜けていることがあります。この場合、参加者たちが深堀りしなければならないのは、表層ニーズの向こう側にある「コミュニティの参加者たち自身も気が付いていないニーズ」。それを見極めるため、何度もコミュニティとの質疑応答を繰り返しながら提言をまとめていきます。

特にOpen Programmeの場合は、出自の異なる参加者同士のコミュニケーションに「それぞれの企業の常識」が通用せず、さらにプロジェクトを困難なものにします。粒度の小さな例では、常にカメラオフでミーティングをする企業からの参加者と、それがマナー違反となる企業からの参加者がチーム活動をするなど、スタートから「自分たちの当たり前を疑う」ことが求められます。「はじめはどうなることかと思った」「共通言語がない最初が一番しんどかった」というのは、CALの振り返りの際に良く出てくる感想です。

そして、課題形成のために必要な土台に、ソフトスキルである共感力(エンパシー)があります。「Aが必要です」「わかりました。はいどうぞ」では、同情(シンパシー)が動機のボランティア活動になってしまいます。彼らが本当に必要としているものは何か。どんな視点を持っていて、どんなことに心動かされるのか。その上で、提示された課題は真の課題と言えるだろうか。強い共感力を伴わないと、「本当の課題を解決するための課題形成」には繋がらないのです。

こうした答えのない問いを生み続けるCALには、リアルな課題の手触り感とダイナミズムがあります。そして、それだけの大変さを伴う体験があってこそ、そのあとの内省や学びも深くなるのです。”Life Changing Experience“とは良く言ったもので、文字通り、それまでの人生観を覆すような体験を提供できることが、CALというプロジェクトが持つ力なのです。

CALに取り組んだある参加者は、「待っているだけではなく、自分から意識して相手のニーズや課題を取りに行く必要があると学んだ」との感想をシェアしてくれました。長年のキャリアを持ち、課題解決力は非常に高いとお見受けするその方が、プログラムの最後に「目指すリーダー像」としたのは、他でもない「共感力のあるリーダー」でした。

Forbesの記事(*3)でも、パンデミック後に求められるリーダーシップについて、以下のような指摘がありました。

  • 良いときも悪いときも、組織を導いていける能力を備えたマネージャーの採用と育成が、企業にとって不可欠となったのだ。そのためには、従来のようなマネジメント開発戦略のさらに「先」を見据え、組織の成功に不可欠なスキルを育成する必要がある。そうしたスキルのひとつが、リーダーシップに欠かせない共感力だ。共感力はおそらく、現代の職場で必要とされる唯一最大の管理スキルと言えるだろう

今、これまで以上に他者との協働、社会課題解決を起点としたビジネス創出が企業存続のカギとなり、高い共感力を発揮できるリーダーが一層求められる時代となったのです。共感力が大きな問いを立てる役に立った企業の実例をひとつご紹介します。

Ikeaは、Disable(障がい)を、同じ響きのThisAbles(これが可能)と言い換えて障がい者向け家具を打ち出しました。それは、Ikeaのスタッフが、障がい者の人たちが我慢している現状を「他人事だから」とスルーせず「もっと素敵な家に住みたいだろうな」「どうしたらそれが出来るだろう」と共感力を持って問うたからです。目の前の課題に対し、「本当に必要なものは何か」「何が自分たちにできるか」と考える。その課題形成力が企業の将来を切り拓くのです。IKEA ThisAbles- The Project - YouTube (音声にご注意ください)

インパクトの経験学習サイクルは、原体験から内省、学びを通して代えがたい「経験値」という名の筋肉を作ります。筋肉は、負荷を与えることで強くなります。参加者がCALに真剣に取り組むプロセスをサポートするとき、まさに「ビジネスパーソンの筋トレの場」だと感じることが多々あります。
これからも、私たちは共感力を高める筋トレの場を提供し続けていきます。
(Written by Mayu, Sustainable Business Enabler)
>>>この筆者と話してみる

参考:
*1 細谷功『問題発見力を鍛える』(講談社、2020)
*2【山口周】今後は問題を「解決」できる人より、「発見」できる人の価値が増す | ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
*3 ポストコロナのビジネス推進に欠かせない「共感力」 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

CALやTHOUGHT LEADERSHIP プログラムについての詳細は、貴社担当CPまたは、[email protected]までお問い合わせください。

>>>Back to News Release Top 

>>>Back to Japan Top