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【Column】50代からの能力開発、もう手遅れですか?

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Published: January 30, 2026
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2026.2.3

人生100年時代、定年延長が進み、より長く働ける社会になりつつあります。しかしその一方で、キャリアの終盤に差し掛かるエルダー世代(ミドルとシニアの間)が、将来に不安を抱えたり、キャリアの行き詰まりを感じたりする姿は、今も変わらず見受けられます。本来であれば、これまでの経験を活かし、組織により高い価値貢献を続けられるはずの世代。しかし、他の世代に比べて研修や支援の機会が少ないため、結果として放置されがちです。 

なぜエルダー世代は放置されるのか 

この問題には、少なくとも3つの立場からのバイアスがあると考えられます。 

  • エルダー世代本人:体力や気力の変化、過去の成功体験への固執が新しい挑戦へのブレーキになっている 
  • 上司:多忙ゆえに支援も若手優先となり、エルダー世代に対し「自分でなんとかできるだろう」と後回しにしてしまう。あるいは自分より年上の部下への接し方がわからず、踏み込むことを迷っている 
  • 人事・研修企画者:若手や中堅に比べて、エルダー世代への育成支援は画一的な成果やゴール状態が描きにくい。対象者のキャリア幅もあることから研修のデザインがしづらい。結果「自助努力でやってもらおう」と放置してしまう 

こうして、本人も「自分でなんとかしなければいけない」と感じつつ、どうしたらよいのかわからない。相談相手である上司は、忙しく手が割けない。組織も距離を置く。結果として誰も手を差し伸べないまま、静かに離脱していく。いわゆるQuiet Quitting(静かな退職)やクロックボッチング(忙しく働いているように見えるが、実際には意味のある結果を出していない)といった現象は若手層に限らず、エルダー世代にも静かに広がっています。無為に過ごさざるを得ない状況は、誰にとっても幸せなことではないと思います。

「共助」という視点 

ここで視点を切り替えるため、「共助」という考え方をこの関係に取り入れて見たいと思います。エルダー世代は、流動性知能から結晶性知能へとシフトチェンジする時期にあると言われています。イギリスの心理学者レイモンド・キャッテルは、これら概念を以下の通り定義しています。 

  • 流動性知能:新しい問題への柔軟な対応力(加齢とともに低下)
  • 結晶性知能:経験に基づく知識や判断力(加齢とともに向上) 

新しい挑戦は確かにしんどいかもしれませんが、「まだ会社に貢献したい」「自分らしい形で役に立ちたい」と願う人は少なくありません。言い換えると「重ねてきた経験を周囲に還元する」ことこそ、この世代の強みでもあります。一方で、エルダー世代と向き合うには、上司は「ナレッジリーダー(知識を価値に変える推進者)」として一層の役割が求められる。部下の経験と組織の課題をつなげ、機会や場を提供することができれば、本人の力を引き出すことができます。このように、本人と上司、双方が支援し合うことで、エルダー世代が孤立することなく貢献実感を持ち、かつ組織の役に立つというwin-winが成立する。まさに共助だと言えます。

MBO-Sの運用を見直すことで生まれる機会

この共助のポイントとなるのが、MBO-S(目標管理制度)の運用です。世の中の多くのMBO-Sは短期的な事業目標達成のためのブレイクダウンに偏りがちです。しかし、エルダー世代に期待されるのは事業目標の達成だけではなく、経験や暗黙知の形式知化です。  

  • エルダー世代本人にとっては、自分の知見を形式知化し、他者に役立てる 
  • 上司にとっては、部下の知見を引き出し、組織資産へと転換する 
  • 人事にとっては、MBO-Sという既存施策を用いて働きかける 

もちろん、上司がMBO-Sの機能そのものを変えることは難しいでしょう。しかし運用の仕方を変える、あるいは工夫することは可能です。例えばエルダー世代の部下の目標設定の一部を「経験の棚卸し」「知見の共有」「後輩育成」などに置き換えることで、機能を共助の仕組みへと転換できます。

暗黙知を形式知化して、組織に還元する

ここでMBO-Sを活用して、エルダー世代の持つノウハウを組織還元した事例をひとつご紹介します。僭越ながら、エルダー世代である私の経験です。ある年度のMBO-Sとして、これまでの知見を用いて、オリジナルの社内向けワークショップの実施が設定されました。このワークショップのデザインプロセスは、まさに暗黙知を形式知化していくものでした。 

まずは経験を棚卸し、これまで自分なりに試行錯誤し、積み上げてきた管理手法を洗い出しました。本人にとっては長年「当たり前にやっていること」の中に、他者にとって価値ある知見がある。自己流の工夫事例をひととおり洗い出した後は、上司のサポートを受けながらそれを「他の人でもできる」「汎用的に使える」形にしていきました。この時の上司との対話によって、これまで行ってきた数々の工夫の背景にある念いや目指したい姿が改めて引き出され、クリアになっていきました。そうして汎用化したノウハウを伝えるため、最後に検討したのはワークショップのデザインです。ただ管理手法にかかるTIPSの伝授に留まらず、参加者のありたい姿を描くこと、そしてこのノウハウを用いることのそれぞれの意味付けを考える場を持つなど、当初からは想像していなかった形でのワークショップ設計となりました。 

またノウハウは実践し振り返り、磨き上げるからこそ、身につきます。そのため単発の研修実施で終わるのではなく、メンバーを中長期で、また日常的にサポートし続けました。その結果、実施数か月後には、ワークショップ内で用いたキーワードがメンバー間で日常遣いされるようになるほど、社内浸透が見られるようになりました。またメンバーの行動変化の兆しも見受けられるようになってきました。 

MBO-S運用における共助が、個人の中にある暗黙知を形式知化することを助ける。それを伝えることで社内にポジティブな変化を起こす。この経験は私自身にとっても貢献実感の高まりをもたらし、キャリアのシフトチェンジを感じる機会となりました。次なるありたい姿を描くことにもつながりました。

共助を支える三者の役割 

改めて、エルダー世代の能力開発には、以下三者それぞれの関わりが不可欠だと考えます。 

  • エルダー世代本人:自分の知見を整理し、他者に役立てることで貢献実感を得る 
  • 上司:MBO-Sの運用を見直し、部下の経験を引き出し、組織課題とつなげる役割を担う 
  • 人事:MBO-S運用における、共助のマインドを喚起する 

これら連携があって初めて、エルダー世代が放置されることなく、その知見は組織の資産へと転換されるのです。 

やれることは、まだあります。本人・上司・人事がそれぞれの立場で一歩踏み出すことで、孤立は協働に変わります。そしてエルダー世代は、組織の未来を支える存在になり得ます。放置しておくのは、あまりにももったいない。共助の視点で、彼らのこれからのキャリアを、共に描いてみてはいかがでしょうか。 

参考文献:
・高尾 義明(2024)『50代からの幸せな働き方』ダイヤモンド社
・アーサー・C・ブルックス(2023)『人生後半の戦略書』SBクリエイティブ
・藤井 孝一(2024)『50代がうまくいく人の戦略書』三笠書房
・坂本 貴志、松雄 茂『再雇用という働き方』PHP新書

(Written by BarbaraDirector, Brand Enhance Department)

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