2026.1.20
仕事で期待に応えよう、成果を出そうとは思っているものの、なかなか前に進まない。気づけば締め切りが迫り、焦りだけが募っていく。そんな経験は誰にでもあると思います。一体なぜ、こうした状況に陥ってしまうのでしょうか。
その業務についての経験がなかったり、遂行に必要なスキルが不十分だったり、他の業務に押し出されてしまったりと、その理由は様々だと思います。今回は、その仕事への「のめり込み」という観点でこの問題を考えてみたいと思います。
■ MBO-Sを重荷に感じ、「のめり込めなかった」経験
impactには会社の仕組みとして、毎年大きな仕事を任されるMBO-Sがあります。私もこれまで何度もこのMBO-Sに取り組んできましたが、うまく進められない年が続いた時期がありました。そのパターンとしては、最初は時間に余裕があると思い、着手を後回しにする。いざ手をつけ始めてもうまく進まず、一旦また後回しにする。気づけば手がつけられなくなり、塩漬け状態に。上司から「どうなってる?」と問われてようやく動き出し、締め切り間際に慌てて仕上げたものの、達成感は乏しく「ただ終わらせただけ」という感覚だけが残る。成果物も生かしきれない。そんな仕事の進め方が続いていました。
今にして思えば、この時私は、上司から「任せた仕事ができるかどうか試されている」と感じていました。試されているのだから相談したら負け。もしできないと思われたら評価が下がる。そんな風に思い込んでいたため、着手前に上司へ相談することすら避けていたのです。時間が経てばたつほど、「まだこれだけしか進んでいないの?」と言われるのでは、という不安もありました。
■ 進め方を変えたことで起きた変化
ある年、上司が変わったことをきっかけに、私は進め方を見直しました。最初の見通し立て段階に注力するようにしたのです。上司にミーティングを依頼し、仕事の目的やゴールの再確認、進め方のポイントやアドバイスを最初に受ける。見通しを立て、またそれを上司と共有した上で進める。そうすると、「できるかどうか不安」という気持ちが薄れ、すぐに手を付けられるようになり、結果として仕事に勢いをつけることができたのです。
さらに、あるタスクフォースのリード役にアサインされた際に、この小さな成功体験を応用してみました。他のメンバーにタスクを渡して進めてもらう時にも、同じように最初に見通しについて話し合う場を持ち、まずは小さなことから着手してもらうようにしました。するとやはり、以前は主体的に見えなかったメンバーの動きが明らかに変わったのです。チーム内でコンスタントなコミュニケーションが発生するようになり、途中経過も明白になりました。リーダーとしても、進捗確認やアラートが出しやすくなりました。そして、期限ぎりぎりになって必死にプロジェクトを完了させる、いつものパターンに陥ることなく、むしろスケジュールに余裕をもってプロジェクトを進行していくことができたのです。
プロジェクト終盤、タスクフォースの成果を全社お披露目する機会を持ちました。その際、社内の他メンバーからは「プロジェクトの次の展開が楽しみで仕方ない」という感想が聞かれました。そしてそんな社内の後押しを受け、タスクフォースメンバーからは「最後までこだわっていいものを研修参加者に届けよう」と前向きな反応があがりました。そこには、これまでとは確かに違う手ごたえと達成感がありました。自分たちのチームが形にしたこと、そして他メンバーからポジティブな反応をもらえるチームとなれたことが嬉しく、誇らしかったです。
■ 自分でコントロールできると、人は動ける
誰かに指示をされてから動くと、人はどうしてもネガティブな感情を抱きやすくなります。「やらされている」という感覚が生まれ、行動が鈍くなる。自分ができることが小さく狭く感じる。これを心理学では「外的ローカス・オブ・コントロール(ELOC)」といいます。逆に、コントロールの所在が自分自身にあると考えるのが「内的ローカス・オブ・コントロール(ILOC)」です。このような心理状態にあれば、自分で動く → ポジティブな感情が生まれる → さらに動けるという良い循環が生まれるのです。
しかしながら、「自分から先に動くことが大事」と頭では分かっていても、実際には難しいものです。時間がない、難易度が高い、苦手だから…と動かない理由には事欠きません。だからこそ、まずは 見通しをつけることが大切です。
- 最終的に何をすればいいのか
- どういったことが進める上でのポイントになるのか
- どこが難所なのか
段取りをつけて、こうしたことがある程度見えていると、「できそうだ」と思えるようになり、一歩目が踏み出しやすくなります。そのためにも、早めに上司と壁打ちをしたり、仕組みに頼ったりすることは決して悪いことではありません。むしろ、主体性を発揮するための大切な準備と言えます。
■ 行動が感情をつくる
最後に、今回の取り組みで私が強く感じたことがあります。感情は、行動の後からついてくるということです。やる気がない状態でも、作業を始めると次第に気分が乗ってきて、集中力が高まっていく心理現象のことを作業興奮と言います。巷でよく聞かれる「モチベが上がらないからできない(やらない)」は間違っている、あるいは役に立たない考え方ではないでしょうか。
自分自身はもちろん、部下や後輩の仕事への「のめり込み」を生み出していくために、テンションや感情、ムードに流されることなく、誰かと一緒になって「最初のひと転がし」をする。「話せば分かる」ではなく、時には「やれば分かる」と強めに後押ししてあげる。やらされ感の罠に陥らず、仕事を楽しむためには、小さな、しかし具体的な違いが出発点になる。そう感じています。
参考文献、URL等
・日本の人事部 HRペディア|ローカス・オブ・コントロール
・高尾義明・森永雄太 編著(2023)「ジョブ・クラフティング 仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ」、白桃書房
・上淵寿 編著(2004)「動機づけ研究の最前線」、北大路書房
・松本洋(2012)「自責社員と他責社員」、幻冬舎
(Written by Yasu、Master Coordinator, Client Success Department)