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【Column】外国人材の本当の価値を引き出すために

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2023.02.20

まずは私自身についてからお話を始めたいと思います。 

私はベトナム出身で、2011年に大学進学のため来日し、卒業後もそのまま日本で就職しました。当時、外国人材に求められたのは多言語スキルやコミュニケーションスキルなどでした。日本という異文化の環境での私の価値は、そうしたことに限られるのだろうかと常に疑問に思っていました。その後、インパクトに入社してから、リーダーシップ発揮も求められるようになり、今に至ります。 

今回のコラムでは、そうした私自身の経験や問題意識を基に、企業がどのように支援すれば外国人材から本当の価値発揮を引き出せるのかについて述べます。 

2020年の調査によりますと、調査対象の約8割企業が外国人採用をしたことがあります。また、そのうち約5割は正社員として外国人を採用しています。長期的な視点での外国人材の活用を視野に入れているものと考えられます(1)。背景には、ダイバーシティの考えが普及するにつれて、外国人材への期待も高まっていることもあるでしょう。語学力が必要な業務のほか、異なる価値観から生まれるビジネスアイデア・業務改善等、ダイバーシティがもたらす刺激も魅力です。このことからも、外国人社員は「多言語・グローバル化への対応」に留まらず「社内に新しい風を吹かせる」ことで大いに価値を発揮できると考えられます。 

しかし、2021年の調査結果によると、外国人材に何を期待するのか、採用目的を明確にしないまま、人材を確保するための手段として活用している企業も増えているようです(2)。こうした採用は、優秀なスキル・多言語・多文化を理解できる外国人材だからこそ、リーダーシップを発揮し、組織に新しい刺激を与えることができるという点を見落としているのではないでしょうか。 

一方、当の外国人材はどうでしょう。海を渡り、異国で専門性を高め、スキルアップすることなど、成長機会は外国人社員が日本企業で働く理由の一つだと言われています。昨年私が日本で働く外国人材50名に行ったヒアリングでも、成長意識を持っている外国人材が多いという結果になっています。しかし、その「成長」とは専門的なスキルアップに偏っている場合が多く見受けられました。 

ここで考えるべきは、スキルに長けているだけの人材ならば、外国人材である必要も正社員である必要もないという点です。せっかく異文化の組織に属しているなら、スキルアップに留まってはもったいないことです。自ら業務改善・ダイバーシティ促進など、組織に新しい風を吹かせ、リーダーシップを発揮する経験を積むことで成長の可能性が更に広げられるのではないでしょうか。そして、それこそが外国人材の本来発揮すべき価値だと考えます。 

ここでは、外国人材の本当の価値発揮を引き出し、組織と外国人材Win-Winな関係を醸成するために、組織が取り組む価値があることを3つ挙げます。 

■期待を伝える 
まずは組織が外国人材に期待することを具体化し、本人に明確に伝えることです。経済産業省の「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」での外国人材を採用するためのチェックリストの第一項目は人物像の具体化です(3)。どのようなスキル・能力を期待するのかはもちろん、新しいやり方や価値観によって組織に刺激を与える役割への期待も本人に伝えることが大事です。ポイントになるのは、この役割は組織の一方的な期待ではなく、本人にもとても良い成長機会であることを明確に理解させることです。 

■体制・仕組みを整える 
期待を伝えるとともに、外国人材によるリーダーシップ発揮を支援する体制・仕組みを整えることが必要です。そして、その方針を現場まで浸透させることです。経営層は新しい価値観を取り入れて業務改善を催促したいと考えて外国人材採用していても、現場はその方針を理解できず、外国人材改善提案を否定する場合がありうるからです。 

この点、JETRO(日本貿易振興機構)がメンター制度などのフォローアップ体制の整備を推奨しています(4)。 
この場合のメンターにはマネージャー層をアサインすることをおすすめします。推進力を持っているマネージャーは外国人材リーダーシップ発揮をより催促する効果が期待できます。 

■リーダーシップ発揮機会を提供する 
組織で風を巻き起こすということはすぐできることではありません。こういったリーダーシップ行動は経験学習により開発されるものです。経験学習モデルの最初のステップは、そのものずばり、経験をすることです(5)。外国人材が本当の価値を発揮できるようにするためには、些細なことでも成功体験が必要です。小さな改善アイデア・リクエスト・提案でも、それをしっかり受け止めて、実現に向けたサポートが重要だと思われます。 

そして、発揮機会と共に開発機会も提供することが必要です。異文化の中でリーダーシップを発揮するには、現場で経験を積むことが不可欠です。しかし、それと同様に重要なのが、その手前の段階、リーダーシップを発揮することの自分にとっての意味を見つけだす段階でも、内省支援などのサポートです。 

繰り返しになりますが、外国人材がスキルアップ・知識を増やすなどの成長を目指していくのはもちろんですが、それだけでは自ら成長の可能性を狭めていると考えます。成長観を広く捉え、どの環境でもさらに活躍するためには、リーダーシップの発揮による成長も求められます。企業がその成長を支援することで、本当のWin-Win関係を築けていけるのではないでしょうか。 


(Written by Lam、Client Partner) 
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参考サイト 
(1)みんなの採用部(2021.11.01)「【最新】外国人採用状況に関するアンケート結果|企業が抱える課題や採用状況を大解剖」https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/a-contents-saiyo-foreigner_questionnaire200218/ (最終閲覧日:2022年5月25日) 

(2)みんなの採用部(2022.05.09)「外国人雇用は採用課題の解決策に?~メリット・デメリットと注意点~」https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/a-contents-middlecareer-kaigaimerito-181129/  (最終閲覧日:2022年5月25日) 

(3) 経済産業省 「外国人留学生の採用や入社後の活躍 に向けたハンドブック ~実践企業に学ぶ12の秘訣~」https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228007/20200228007-1.pdf (最終閲覧日:2022年5月25日) 

(4) JETRO(日本貿易振興機構) 「高度外国人材活躍推進ポータル・活躍に向けて企業の方に」 https://www.jetro.go.jp/hrportal/forcompanies/active.html (最終閲覧日:2022年5月25日) 

(5) 中原 淳(2013)「特集-人材育成とキャリア開発経験学習の理論的系譜と研究動向」https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2013/10/pdf/004-014.pdf (最終閲覧日:2022年5月25日) 


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