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【Column】中途社員を即戦力にする前に、設計すべき「分からなさ」

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Topics
Leadership
Talent
Published
June 9, 2026

2026.6.9

新しい中途メンバーが入社。同業界・同職種からのジョインと聞き、即戦力としての期待は高まる。ところが入社後の立ち上がりに案外苦戦している。中途入社者本人も「求められていることに応えられている手ごたえがない」ともどかしそうにしている。こんなことはありませんか。 

この立ち上がりで起きるズレは、新しい環境で皆超えていく必要がある「分からなさ」が消化されないまま、しかし一見仕事だけが進んでしまう構造から生まれているのかもしれません。

「分からなさ」が生まれる要因

もちろん新しいメンバーには、組織に慣れる、馴染むためのオンボーディング支援として、ルールや手続き、ツールの習得や実務OJTなどの定型プロセスがまず用意されていることでしょう。しかしそれらの支援だけでは、中途社員が感じるもどかしさの解消はできないのではないか。今回、私自身がインパクトという新しい環境に中途入社した際、そのことを強く感じました。

もどかしさを感じるのはなぜか。それは仮に業界や職種が類似する先への転職であっても、組織が異なる。そして組織が異なれば、提供する「価値の源泉」を生み出すポイントが異なる点に起因しているのではないでしょうか。

それらが具体的に現れるのは、社内ルールや業務プロセス、要求される業務水準などです。抽象的なもので言うと、組織カルチャーでしょう。こういった目に見えるもの、また見えないもので支えられているバリューチェーンを理解し、肚落ちする。それは短時間で容易にできることでもありません。その「分からなさ」や、これまでの知っているものとの差異、現時点での違和感はなかなかうまく言語化しにくい。結果として「自分なりに考えても、周囲からの反応がかみ合わない」「役に立っていないのではないか」といった手ごたえのなさや自己効力感の低減に繋がるように感じます。

では、こういった状態における効果的な支援とは、どのようなものなのか。例えば中途社員本人が得意で「できる」と感じることを増やすアサインや、何かしら具体のスキルを付加するような支援も考えうるかもしれません。しかし、実際にぶつかっている壁が「その会社の価値の源泉」がつかみ切れていないことなのだとしたら、それらの対処の効果は一時的でしょう。むしろ「源泉に触れ直すプロセス」を業務の中で設計する。この効果が大きいと、私自身の経験から感じており、今回はその話を共有させていただきます。

「分からなさ」に正面から向き合う場を持つ

私は約1年前、組織・人材開発コンサルティングを行う会社のCP(クライアントパートナー)として中途入社しました。そしてMBO-Sとして「DP(ディスカッションペーパー)のデザインガイドライン改訂」に取り組みました。

DPは、いわゆるクライアントへの提案書です。しかしインパクトでは、提案書とは呼んでいません。それは、一方的に解決策を提示するのではなく、クライアントと共にデザインすることにこだわっているからです。議論のベースにするための資料だから、ディスカッションペーパー。情報を整理し、組織課題を構造化したうえで、解決のデザインを描いたたたき台です。

このDP作成、つまり解決策のデザイン業務は、「価値の源泉」を生み出す重要ポイントのひとつであり、だからこそ新人にとって習得難易度が高いと長年されてきました。そして私自身、このMBO-Sにアサインされた際DPを作ったことは一度もない状態。分からなさどころか、何がわからないのかもわからないところからのスタートでした。

また私自身の仕事の進め方を考えても、チャレンジングなMBO-Sに感じられました。これまで私は、全体像を把握し計画を立てたうえで、一人で完結させる仕事の進め方を好んで取ってきました。そのためアサイン当初はかなり戸惑っていました。

そうはいっても、取り組むしかない。概要を掴むために先輩CP達に何度もヒアリングし、自分なりに感じた改定ポイントにつき、方針をまとめて上席に提案。フィードバックを受け、何度も修正を重ねるプロセスを経ました。いわば、そのプロセスを通らざるを得ない設計になっていました。

プロセスからの2つの収穫

この経験を通じて、2つの収穫がありました。ひとつは、DPという提案資料作成の全体像とポイントを理解できたことです。個別具体のDP作成から学べることももちろんありますが、一段抽象度を上げて構成を理解する機会となりました。

今振り返ると重要だったのは、ガイドラインをゼロから作るのではなく、「改訂」する設計であった点です。既存のガイドラインをベースにしながら、何が残され、何が削られるのか、なぜその表現になっているのか、と比較しながら判断していくことが、私の学習の速度を上げました。「この会社が何を大事な論点として置くのか」、「どの順番で構造化するのか」、「筋が良いアウトプットはどんな形なのか」等、言語化されにくい前提について、少しずつ手触りが生まれていった感覚があります。

もうひとつは、周囲の人を巻き込むことで多様な支援を得られたことです。職場学習の研究では、能力発揮を支える関わりとして、業務支援、精神支援、内省支援の3つの支援があるとされます。今回のプロセスを振り返ると、私が周囲からもらった支援は、これらに当てはまるものでした。

例えば、直接的な業務支援としての作成資料に対するフィードバック。また、ある先輩社員とThat’s SO(ザッソウ:雑な相談)として短時間の壁打ち中にもらったコメントから「自分はアンコントローラブルな部分に時間をかけていたのだ」と内省できた場面がありました。One on Oneでは、直属の上司から「仕事の捉え方が変わってきているように見える」と成長を言葉にしてもらったこともありました。なかなか完成しないMBO-Sや、うまく進められていると感じられない業務に焦りを感じる中でも、それらのやり取りから前に進んでいる感覚を得られました。

このMBO-Sに半年間取り組んだ結果、私の仕事の進め方には具体的な変化が生まれました。DP作成時、特定パートにかかっていた時間が半減し、加えて差し戻しもかなり減りました。また手が止まった際にも立ち止まるのではなく「この情報は、この人に聞くのが早いな」とヘルプシークの当たりがつくようになりました。半年前に比べると、力を入れる配分が変わった感覚があります。

学習装置として、MBO-Sを活用する

ここまでは決して順調だったわけではありません。取り組み中に、私自身のメンタルモデルが学習を遅らせていることにも気づきました。完璧に理解してから動こうとするクセや、分からないことを開示することへの抵抗などが根強くある。これらの特徴は新しい環境では学びを遠ざけることにもつながります。だからこそ、学習者本人のやり方に頼らず、逆に「(簡単に、ひとりでは)分からない」ことを通過する仕組み活用が活きたのだと思います。人を巻き込み、解明し、整理しようとするチャレンジへの支援をいただき、それが壁を超えることを支えてくれました。

中途社員としては、期待を感じるからこそ応えたい。とはいえ、提供価値の全体像など複雑な捉えにくいものがあればあるほど、目の前の部分的な「できなさ」に意識が吸い寄せられる。その気持ちは私自身、痛いほどわかります。だからこそ、中期的な取り組みにて支援を受けながら、それらに触れられる経験があると「今、掴むべきは前提であり、価値の源泉のほうだ」と捉え直しが起こせるのだと感じました。すると焦りよりも学習サイクルを回していくことに集中できる。今回のMBO-Sは、その転換点を意図的につくる装置として機能したのだと感じています。

中途社員の「できる」を引き出すために、まずはあえて「分からなさ」を通過できる設計を置く。ここに、いわゆる即戦力化を進めていくヒントがあるように感じています。

参考文献:
・中原 淳(2010)『職場学習論』東京大学出版会
・ロバート・キーガン(2025)『成人発達理論』英治出版
・斉藤 徹(2021)『だから僕たちは、組織を変えていける』クロスメディア・パブリッシング

(Written by Motty, Client Partner, Business Consulting Department)

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