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Leadership

【Column】方向性を指し示すリーダーが持つ「手放す勇気」

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Published: May 1, 2026
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2026.5.11

インパクトジャパンのインターンシップ「BACKSTAGE」。  

BACKSTAGE」とは、あしなが奨学生である大学2年生以上を対象としたプログラムです。弊社が取り組む、1)若者支援団体への寄付、2)団体から支援を受ける若者への研修のプロボノ提供という、「リーダーシップ・エコシステム®」の一環として取り組んでいます。若者が社会人としてのスタートをスムーズに切れるよう、「活躍しているビジネスパーソンのやりがいやジレンマを舞台袖から観ることで、社会人の先取り学習をする」ことをねらいとしています。  

本コラムは、2025年度BACKSTAGE参加者の工藤杏介さんがその気づきと学びを綴ったものです。 

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ボランティア団体でマネージャーを務める私には、ずっと拭えない悩みがひとつありました。仲間に依頼をする際には相手が迷うことがないよう、手順の隅々まで丁寧に説明し、情報の粒度を極限まで細かくして伝えるよう努めていました。しかしその先に待っていたのは、指示を待つメンバーの沈黙と、タスクを抱え込みパンク寸前の自分でした。望んでいないのに起きてしまう、自分がいないと回らない状況。一方でどこか「この忙しさは責任を果たしている証」だと勘違いして容認していたのかもしれません。そんな私の凝り固まったモノの見方が、BACKSTAGEでオブザーブさせていただいたオープンプログラムを機に、音を立てて崩れ去りました。 

「情報の粒度」は細かければ細かいほどいいわけではない 

プログラム内ではいくつかのプロジェクトと、そこで起こった事象をベースにした内省レビューが繰り返されます。あるプロジェクトでは、メンバー間に情報格差がある中で、目標物を構築するためコミュニケーションをとる必要がありました。ここでは、例えば「○○さん、右手をもう10cm上げて」といった具体的な手順(How)の指示が不可欠でした。ある書籍*にも、『未経験の相手には、細かな共有が「安心の灯」となる』とありました。この様子を見た私は「やっぱり相手には細かく伝えて、教えることが正解なんだ」と一度は安堵しました。

しかし一転して、次のプロジェクトでは、この方法が通用しなくなったのです。あるストーリーに則って、制限時間内に最終ゴールまでたどり着く。しかし、複数のミッションがそれぞれ同時に進行するため、状況は刻一刻と変化していきます。この時、一つ前のプロジェクトのように、リードする役がすべての情報を把握して、細かく手順を指示しようとすることは、むしろ足枷となることがよくわかりました。

全体リーダーを務めた方の指示の出し方は、普段の私とは真逆でした。各サイトに存在する副リーダーたちに対し「必要な物資を確保して、自サイトのミッションをクリアせよ」というゴールを明確にそして丁寧に伝え、具体的な手順には一切口出しをしませんでした。各サイトが必死にミッションに取り組む中、制限時間が迫る。失敗が許されない重圧の中、メンバーから意見が噴出したシーンがありました。その時、彼はその声を一度すべて受け止めていました。その上でリーダーとして最終的な決断を下していました。これは「衆議独裁(fair process)」という、メンバーの意見を広く聞くけれども決めるのはリーダーという意思決定方法です。

ゴールを明確かつ丁寧に伝え、現場でのやり方はメンバーに委ねる。この判断の余白があるからこそ、試行錯誤したメンバーから個々の知恵が集まる。さらに集まった知恵を、最後はリーダーが責任を持って決断し、チームの実行を加速させる。この「ゴールの粒度は高く、Howの粒度を粗く」という情報粒度の逆転こそが、目標達成を可能にする主体性を生み出したように感じました。

リーダーは、相手に合わせた伝え方のチューニングを行う 

さらに、このリーダー役を務めた方へのインタビューを通じて、この働きかけには相手に応じた繊細なチューニングが必要であることも学びました。ある企業でエリアマネージャーを務めているその方は、メンバーを「スキル」と「マインド」の二軸で4つのタイプに分け、伝える情報の粒度を意識的に使い分けているそうです。たとえば、スキルもマインドも未熟な相手には、迷わせないよう一時的に指示の粒度を細かくして道筋を示す。そして相手の成長に合わせて徐々にその手綱を離していく。こうして、相手に応じて働きかけを工夫しながら、同じゴールに向かうチームをつくっていくことこそ、真のリーダーシップだと確信しました。ひるがえって、私は自分でコントロールのためのハンドルを握りしめるのではなく、相手を信頼して「手放す勇気」を持つ必要があると感じました。

恐怖を乗り越えた先にたどり着ける景色 

正直に言えば、もし実際の仕事なら私は失敗が怖くて、すべてを細かく指示したくなると思います。しかしインタビューした方は、その怖さを超える「リーダーだけの報酬」を私に聞かせてくれました。「確かに、自分がすべてやれば確実で、自身の経験にもなる。でも、それでは私の手の届く範囲の成果しか出せない。あえて人に任せることで、一人では絶対に成しえない大きなゴールにもたどり着けるんだ」と。さらに彼は「早く・安く・賢く失敗する分には、すべて経験になると捉えている」とも話してくれました。勇気を持って、相手に考える余白を託した先に待っているのは、手持ち無沙汰なメンバーが一人もいない、最高効率で回るチーム。全員が共通意識を持ち、別々の役割をこなしながらも、同じ北極星に向かって一体となる。その圧倒的な景色こそが、リーダーが手にする最大の報酬なのだと感じました。

踏み出した小さな一歩と、感じた光 

この学びを経て、私はこの春リードした街頭募金で一つの挑戦をしました。私たちの活動では、休日の午後に街頭に立ち、あしなが奨学生の進学を支える募金のための声かけを行います。活動時間は1回あたり約5時間で、この日参加したのはボランティアスタッフを含めて10名。全員でうまくローテーションをつくって、休憩を取りつつ活動を行う必要があります。

今までの私なら合理性を優先して、迷わず自分で決断を下していました。しかしその日はあえて、一番経験は浅いが前向きに取り組んでいるメンバーにこう問いかけてみました。「全員が休みも取りながら、元気に呼びかけができる状態を作りたい。あなたなら、どんな方法でみんなを休憩に入れる?」そして勇気を出して、そこで返ってきた案を採用し、彼に運用を任せてみたのです。あえてHowの粒度を粗くし、問いかける。すると相手がその件について考えるチャンスが生まれる。そこでその人なりに考えた方法を自らの口で語るからこそ、主体性が宿る。このことを自己決定理論と呼びます。休憩方法を自ら発案した彼が、自分で決めた方法で現場を回そうとする姿を見て、私の心境は「教えなきゃ」という気負いから、「彼らの力を信じたい」という期待に変わりました。

もちろん、まだハンドルを手放すことに対して、少し怖い気持ちもあります。でもお話しくださった社会人の背中に見た「指し示す」リーダーの姿を目指して。まずはHowの粒度を粗く、ゴールの粒度に対して解像度を高く、丁寧に伝えていくことから、私の新しいリーダーシップ発揮を始めていこうと思います。

*参考文献: 
杉浦正和(2017年5月)「入社10年分のリーダー学が3時間で学べる」日経BP社  
阿部紘久(2025年9月)「いい文章 簡単に書けて、きちんと伝わる」日本実業出版社  

(Written by 工藤杏介, BACKSTAGE4期生) 

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