Skip to main content
Leadership

【Column】変わりたいと思いつつ、立ちすくんでしまうのはなぜか?

website-images-THI-47
Published: May 22, 2026
Share this article:

2026.5.25

新たなパーパスが掲げられ、その理解と浸透のためのワークショップを行う。皆で話し合い、ジブンゴトにするためコミットメントを発表して閉会する。そのような機会を複数回持って、具体的な宣言が生まれてもなお社員の行動が変わらない。そんなご相談をクライアントから聞くことがあります。

頭ではわかっている、納得している様子もある。しかし行動が変わらない。その要因は複数あり得ます。例えば、社員が頭の中で変化への不安を大きくしすぎてしまっているのかもしれません。そしてそのことが、行動変容の阻害要因になっている可能性もあります。

個人がこれまでのやり方を変える:アンラーニング 

経験学習に詳しい松尾教授は、個人アンラーニングを「個人が、自身の知識やスキルを意図的に棄却しながら、新しい知識・スキルを取り入れるプロセス」と定義しています。事実に基づいた知識と、タスクを実施するための技術や技能。仕事を通じて身につけてきたこれらノウハウを「棄却」する。これまでの経験は、今の判断や仕事を支えている。そんな自負を持っている中、ノウハウを捨て去ることはとても怖く、勇気がいることだと思います。

そのアンラーニングの進み度合いは、仕事における「信念」や「ルーティン」の変化という観点から測定できると松尾氏は言います。信念とは、外部環境や、技術や業務、また顧客のニーズについての考え方を指します。またルーティンとは、仕事の手続き、情報収集や共有、意思決定についての方法です。これらがどのように変化したか、がアンラーニングの進展を測る指標になるそうです。

確かに、これまでの私の仕事ぶりを振り返ると、頭ではわかっているのに行動に移せない時には、「信念」やそこからの恐れが行動を変えることを阻害していたかもしれません。それは、①安易な相談は、相手の時間を奪うので避けるべしという考え②上司に提案するなら、ある程度形にしていかないといけないとの思い込み③上司との認識ギャップから手戻りが発生し、また仕事が増えることへの恐れ、などでした。働きだして15年以上を経て、いつの間にか染みついたこれら考え方に一石を投じ、またルーティンを変えるきっかけとなったのは、ある中途社員の行動でした。

私の背中を押した仲間のふるまい 

きっかけとなったのは、社内のオープンチャットでの質問行動でした。中途入社した彼女は後、オンボーディング期間のジョブローテーションで多くの部署に関わりながら、仕事を進めていました。そして業務や状況につき不明な点や確認したい点があると、オープンに、端的に速やかに質問や確認をしていました。そして質問して、内容が複雑だったり、ニュアンスのすり合わせがいりそうだと分かったら、すぐに「That’s SO(雑な相談)をinviteしますね、よろしくお願いします」と相手を巻き込み、どんどん仕事を進めていました。

このチャネルで繰り広げられるそのコミュニケーション、そして進んでいくタスクを見て、自分との仕事の進め方に大きな違いを感じました。「この程度しか決まっていなくても、相談していいんだ」と衝撃を受け、「むしろ、こんな風に巻き込めば、協力者が出てきたり、アイディアや知恵が集まったりするんだ」と驚きました。会社が用意した仕組みをフルに活かして、仕事を進めていく仲間。その代理体験により、いつの間にか持っていた信念のいくつかは、少なくとも現在の環境では、思い込みにすぎないと腑に落ちました。

それ以来、情報共有の仕方を変えました。以前なら「ここまでは共有しなくていいかな」と思っていた粒感でも、タスクの進捗はチャットにすぐ上げ、皆に共有する。するとチームメンバーからアドバイスや情報提供、フィードバックがもらえるようになりました。すると次のヒントを得て、選択肢が生まれました。

また困ったことがあったら、まず社内のSupport+HelpSeekチャネルに投稿する。すると「この情報、もしかしたら役に立つかも?」といった反応やアイディアをもらえる機会が増えました。こうした困りきってしまう「前」の行動が増えてきた結果、仕事のスピードが以前より改善しました。

行動が「見える」こと、行動を「見せる」ことが選択肢を増やす 

松尾氏は、アンラーニングのきっかけの一つとして「他者の行動」を上げています。私が早い段階に周囲に相談するという新たなルーティンを身につけられたのは、同僚の行動を見て学んだことによります。オープンコミュニケーション、フロントローディング、仲間へのヘルプシークといった、これまでも活用するように言われてきた社内施策。それら施策を通じて同僚の行動が「見える」。そして自分も行動を敢えて同僚たちに「見せる」。すると、よい方向に物事が動き出していきました。仲間に進捗を共有するともらえるポジティブな反応に励まされ、また小さな達成感を覚えることが増えました。また上司からは「最近変わったね。進捗がよく伝わっているし、タスクをため込まなくなった」とフィードバックをもらいました。それもうれしい話でした。

社内施策の運用が、社で言えばベテラン層に入る私のアンラーニングのきっかけになりました。こういったアプローチは、いわゆる組織経営系アプローチ(組織全体の構造や仕組みの改善で変化を起こす)と言われます。変化を阻んでいたのは、頭の中にある不安や思い込みでした。「変えよう」「変えなきゃ」と思うものの、行動を変えきることはできなかったこれまで。ベテランこそ、「とにかく仕組みに乗って、つべこべ言わずにやってみる」ことで新しい気付きがあるのかもしれません。そして、その後押しとなるのは、本人が勇気を出して変えた行動や発信がスルーされないチームだ、と感じられることも大切だと感じています。

この話を振り返りながら、上司とは「イノベーター理論でいう、レイトマジョリティをどう変えていくかのヒントになりそうだね」との話にもなりました。もし今回のこの経験が、変化に立ちすくむ社員をサポートする皆さんにとって少しでもお役に立てると幸いです。

参考文献:
松尾睦(出版年度:2021年)「仕事のアンラーニング-働き方を学びほぐし-」出版社:同文館 

(Written by Yuki, Coordinator, Client Success Department)

>>>Back to News Release Top 
>>>Back to Japan Top