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Management Development

【Column】「攻め」の新任管理職支援、3つのポイント

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2024.5.22

2023年度の教育研修費用の実態調査*1によると、コロナ禍を経て、人材開発予算は過去10年で最も高い増加見込みとなっているようです。一方で、研修内訳を見ると、管理職への予算は新卒入社者の約半分に留まっている*2とされ、今後の重点教育の対象にも、なかなか挙がっていないというデータも出ています。多くの企業で中核を担うミドルマネジメントの重要性は謳われているにもかかわらず、育成人材としての注力投資がなされないのは、なぜなのでしょうか。本コラムでは、活躍するマネジャー育成のための「攻め」の支援について、そのポイントを考えてみたいと思います。 

守りのインプットに偏りがちな管理職支援

管理職支援が注力されづらい背景として、2つの考えられる要因があります。一つ目は、人事・研修企画側の認識です。「管理職に昇格することが、パフォーマンスに優れた、すでに活躍しているメンバーであると示している」という認識から、彼らをサポートする優先順位が低くなっている可能性があります。あるいは人事サイドに、多忙なマネジャーの業務時間を育成に割くことに対して、現場からの抵抗を懸念したり、気おくれする部分があるのかもしれません。その結果、管理職研修はハラスメント対策や評価面談といった最小限必要な業務の習得に留まり、能力向上ではなく「問題が起きないようにする」守りの支援になっていることも多いと聞きます。 

さらにもう一つの背景として、マネジメントはいわゆるソフトスキルであり、目に見えないスキルのため測りづらく、どう開発すればいいのか分からないという難しさもあるでしょう。どれほど過去にプレイヤーとして業績に貢献していたとしても、マネジメントはまた別物です。しかし、先に述べたような守りの支援に偏向することで、いつの間にか失敗を回避する守りのマネージングプレイヤーが量産されかねないという危惧もしばしば耳にします。 

マネジャーの活躍を阻む「不安」

では守りではない、「攻め」の管理職支援とは、一体どのようなものでしょうか。それを考えるにあたり、そもそもマネジャーが活躍するために何が障壁となっているのかを知る必要があると考えます。参考まで、弊社で提供している新任管理職向けマネジメントプログラム「Major Update」の参加後アンケートでは、以下のようなコメントがよく確認されます。 

  • 書物だけ読んで知識をつけていても、それが経験としてつながっていなかったことを実感した
  • これまで歴任の上長の真似や、自身の経験をもとにしていた。今回は改めて、体系的かつ体感的に学べる機会となり非常に有益であった 

これらのコメントからは、新任マネジャーたちが、テキストや書籍からマネジメント知識を増やしたり、自分の体験を遡りながら「これでよいのだろうか?」と手探りでマネジメントをしてきたことが伝わってきます。

また昨今目にする機会が増えた、管理職になりたくない理由に関する調査を見ると、「責任が重くなりそう」「労働時間に対して、割に合わなそう」といった回答が常に上位を占めているように見受けられます。これらが示唆するのは、マネジメントとは、そもそも具体的に何をするのか分からない曖昧なものであり、その不明瞭なものに対し、管理職ないし管理職候補者たちが、漠然と難しさを感じているということではないでしょうか。一言で言ってしまえば、「不安」を抱えている状態でしょう。かく言う私も、この「不安」を抱えている一人でした。3年前にマネジャーへのオファーを頂いた時、「私にはまだ早いと思います」と一旦断りを入れたのですから。

管理職の背中を押す3つの支援:WhatHow、そしてWhy

では、彼らの「不安」を取り除き、活躍できる管理職となるための「攻め」の支援とは。そのためには、以下の3つが重要であると考えます。

1.マネジメントとは何か(What)を明確にすること
ここで強調したいのは、「マネジメントとは、こういうものである」と教科書的なインプットのみを行うこととの違いです。重要なのは、抽象的なマネジメントという概念を、マネジャー本人が具体に引き寄せることです。つまり、概念であるマネジメントを、「自分たちの業務に置き換えると、どういうことなのか?」考え、実務と接続しながら肚落ちさせることが大切だと考えます。例えば、私たちのプログラムでは、経験学習メソッドを活用することで、これらを実現しています。その他にも、インプットとアウトプットを同時に行えるならば有用な方法はありえます。まずは、マネジャーが感じる「何をすればいいかわからない」不安を取り除くことが第一歩です。

2.マネジャーとしての道筋(How)を描かせること
マネジメントとは、何をすることなのか。その概念がクリアになれば、次は「どうすれば、いいかわからない」不安を払拭する支援が有用です。ここでは、課題形成と戦略を立てることを意味します。実際にマネジメントをする上では、リソースを勘案し、自部署で「何をどの順列で」行うのか、決めねばなりません。例え問題が山積みだとしても、まず何から手をつけるのか。組織のビジョン実現に向けて、今最も優先すべきことは何なのか。これらがマネジャーの中で明確になることで、自信を持ってマネジメントアクションを起こすことができるようになります。もし、組織がマネジャーに求めることが、とりあえず前例・慣習に従って、失敗しないようにコトを進める以上の活躍なのであれば、この課題形成と戦略立ては必須でしょう。  

3.定期的なマネジメントの内省と意味付け(Why)を促すこと
そして最も大切なのは、マネジャーとしての働きを内省すること、そして「その職務を担うことが、自分にとってどんな意味があるのか」、マネジャー本人が考え、実感するための機会を定期的に持つことだと考えます。恐らく、今やほとんどの管理職はプレイングマネジャーとして、日々時間に追われながらマネジメントと自身の業務を両立させていることでしょう。忙しい、だからこそ、定期的に時間を確保して立ち止まり、自身のマネジメントやチームについて振り返る機会をつくることが、本人そして組織のためになる、と筆者は考えています。

直属の上席とのOne On Oneや、他部署の管理職同士で対話の機会を持つこと、また現状のチーム状態を可視化して客観視し、内省する場を持つことなどは、その一例です。弊社では、四半期に一度、社長によるマネジャートレーニングがあります。この場では、戦略の修正を行うこともあれば、今実施している施策を推進するための方法を他部署のマネジャーと共に考えることもあります。この時間は、私自身のマネジメントについて見つめ直す時間となっています。つい目が行きがちな改善点だけでなく、できていることを認識できたり、また戦略を立て、チームに伝え、組織が少しずつ変わりながら進んできたプロセスを振り返ることで、マネジメントの奥深さと同時におもしろさを感じ、前向きに次の挑戦を行おうと思える。そんな場でもあります。 

振り返ると、私自身もこうした3つの支援を得られた、また得られると分かったからこそ、マネジャーになるというチャレンジを選択できました。そして、正解の分からないVUCAと呼ばれる現在のビジネス環境において、今も自分のマネジメントに対して、常に100%の自信があるとは言い切れません。それでも、手がかりとなる支援が会社や上席から提供されることで、守り一辺倒ではなく、新たなチャレンジや変化を起こせてきているとも感じています。ちょうど1年前、全く畑の違う部署のマネジャーへ異動になってからも、案外スムーズに着任し、チームづくりに集中して取り組めてきているのは、間違いなく、マネジメントがソフトスキルであり、それを伸ばす機会をここまで持ててきたからだと感じています(前回コラムより)。管理職が今よりもさらに活躍するために。守りと攻めの支援のバランスを一度見直してみることが有効かもしれません。

(Written by Woody、Manager of Client Success Department)
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