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【Column】「伸び悩む」若手社員に対して、人事ができる効果的な支援とは

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2023.8.28

先日参加した人事勉強会の場で、ある企業のHRBPのKさんから職場での悩みを聞く機会がありました。それは若手の戦力化、そのための成長支援というテーマです。 

「20代中盤~後半の若手社員には、社内異動や中途入社など、新たな環境でチャレンジしようとする人が比較的多い。チャレンジ意欲が高いこと自体はとても喜ばしいが、環境が変わって2〜3ヶ月の時期に、成果が出せない、成長できていない、と悩む人たちが見受けられる。中にはメンタルダウンや退職につながるケースもある。会社側として、期待している若手社員をどう支援したらよいのか。」「上司や人事が話を聞き、必要に応じてアドバイスもしているが、成長を支援するのにもっと効果的な関わりがあるのではないか」というお話でした。弊社でも若手社員を採用、育成しているため、私自身も人事として同様の難しさを感じており、Kさんの話に強い共感を覚えました。 

パーソル総合研究所がまとめた「過去6年間の変化から見る2022年の20代社員像」(※1)によると、 

  • 20代社員は成長に対する意識が高く、仕事での成長について「キャリアの明確化」のイメージを持つ傾向が上昇しており、自律的なキャリア形成に対する意識が高まっている 
  • 20代正社員の成長実感は増加傾向にあり、20代前半の70%(20代後半は66%)が過去1年間に成長を実感している 

と報告されています。 

全体的には自律的なキャリア形成意識を持っており、約3分の2の人たちは、成長実感を持ちながら、仕事に取り組んでいる。ただ裏をかえせば、3人に1人は、何らかの理由で成長実感を持てない状態に陥っている可能性がある、つまり何らかの支援が必要な状態にあると言えそうです。みなさんの会社ではいかがでしょうか。 

そもそも、成長している社員と伸び悩む社員の違いは、どこにあるのでしょうか。これまで複数の会社で人事として働き、多くの社員を見てきた中で感じる相違点が2つあります。 

1つ目に、若手社員本人が「成功」と「成長」を区別して理解できているかどうか、という点です。ここでいう「成功」とは、「成果を出して活躍していること」です。成長している社員は、「成果」と「成功」が同時に訪れないことを、少なくとも感覚的に理解しているように感じます。一方で伸び悩む社員は「すぐに成果が出せない=自分は成長できていない」と捉えてしまうことが多いように感じます。 

慣れた環境で慣れたことをするのと違い、新たな環境で新たなことに取り組んで、すぐに成果が出ないのは、ある意味当たり前です。最初は試行錯誤を重ね、学びを得て行動を修正し、それを繰り返すことで成果が出せるようになる。この学びと修正を繰り返す経験が蓄積されていくことが、まさに「成長」です。成果の前にまず自分の成長に目を向ける必要があるのですが、最近のインスタントカルチャーと他者比較がこれを難しくしているようにも感じます。成長している社員は、この点において「成長の後に成功が来る」という順列で、自分の状況をとらえられているのではないでしょうか。 

2つ目に、「成長」を捉えていくためには、他者との比較ではなく、「自分ができるようになったこと」に気づく「内省力」が必要となります。多くの企業では、振り返りや内省の仕組みとして日報や1on1などの機会があります。その機会が「質の高い内省」、つまり自分の向上・成長につながっていくような内省の場となっているか。自分の仕事の進め方やプロセスについて、良い部分、足りない部分の両方を見て、向上や改善につながる学びを得られる場になっていること。これが重要なのではないでしょうか。 

成長意欲はあるのに、できていないと悩む社員にありがちな状況は、「あれもこれもうまくできていない」とネガティブな側面ばかりに目が行ってしまうことです。すると「自分は能力がなく迷惑ばかりかけてしまう」といった過度な自責や、「環境が悪い、合っていない」と短絡的に他責に結論づけてしまうこともあります。 

かくいう私自身も、振り返ってみると、うまく成果がでないとき、そのことばかりが気になり、自信をなくした時もありました。また心のどこかで、上司や環境のせいだと他責にしたこともあります。そんな時、視点を変えるきっかけとなったのは、他者からの問いかけでした。「どんなに小さいことでもいいから、前と比べてうまくできるようになったと思うことは何?」という問いです。 

うまくいっていることなんてない、という思いが頭をよぎりながらも、フラットに事実に基づき振り返ってみると、「まだまだだけど、できるようになっていることもある」と気づきました。「今」できていない自分に意識を向けるのではなく、「次」は何ができる自分になれば、成果に近づいていくのか。この点に気づいて視界が開ける。こんな経験は、みなさんにもあるのではないでしょうか。 

ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授は、拡張・形成理論で、ポジティブな側面に目を向けることで生まれるポジティブ感情が、本人の思考や行動のレパートリーを拡張すると示唆しています。(※2)そのことからも、ポジティブ、ネガティブの両側面で振り返り、学びを得ていくことが重要だと考えます。弊社でも、Weekly Review、Module Review、1on1など、社員の内省の仕組みがありますが、意図的にポジティブな面とネガティブな面の両方を振り返る問いを組み込んでいます。 

新たなことへのチャレンジの始まりは、特にできていないことに目が向きがちになる時期です。だからこそ、うまくいっていることにも目を向け、成長の兆しを自分で見つけられるようになること。そうして、自律的に成長のための行動をとるサポートをすること。これが若手社員の成長支援で大切だと考えます。そのために、そのタイミングで「成功」と「成長」の捉え方の違いを伝えることや、他者との比較でなく自分の今後につながる内省を促す問いかけを行うことは、人事だからこそできる効果的なサポートではないでしょうか。 

※1:パーソル総合研究所「過去6年間の変化から見る2022年の20代社員像」 
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/pgstop/2022/  (最終閲覧日:2023年8月24日) 
※2:バーバラ・フレドリクソン「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」(2009) 


(Written by Sae、Learning & People Catalyst) 
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