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【Column】今、起きている企業と個人の関係性の変化 (前編)

【Column】今、起きている企業と個人の関係性の変化 (前編)
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2022.3.14

今回は、期せずしてコロナ禍によって加速している“企業と個人の関係性の変化”に焦点を当てたいと思います。 

■コロナ禍による変化の加速 
コロナ禍により我々の生活が一変してから早2年が経ちます。この間、様々な変化がありました。オンラインでのセミナーやイベントが日常化したこともその1つといえるでしょう。物理的に会場へ移動せずに参加できるので、仕事の合間にセミナーに参加し、またすぐ仕事に戻れる。多くのビジネスパーソンにとって、新たな情報や話題に触れ、自分の知識を手軽にアップデートできる機会が増えています。 

そんな中、様々なオンラインセミナーや勉強会に参加してみて感じるのは、2つ以上の肩書や所属を持っている人が増えたことです。Zoomなどの背景画面に、所属している会社での役割や肩書とともに、複業での活動・役割やQRコードが表示されているのをよく見かけるようになりました。大手企業の副業解禁も進み、自社に必要な能力を社外に求める企業と、様々な理由で副業(複業)を求める個人をマッチングするプラットフォーム型サービスも次々と生まれています。今後、複数の肩書を名乗ることは、“一部の特別な人たちのこと”から“誰しもにあてはまる一般的なこと“になっていくのかもしれません。 

このように、私たちが日常的に直接目にしたり感じられたりするレベルで、企業と個人の関係性の変化を感じるようになってきています。かつて、個人は企業に“就社”することで忠誠を尽くし、企業は個人の人生をも“丸抱えする”という関係性だった時代がありました。しかし現在のトレンドは、企業と個人の関係性が“選び選ばれる”ものへと変わりつつあります。30年40年といった超長期的な時間軸ではなく、数年単位の中長期的な時間軸の労使関係を前提として捉え直すことが求められます。ここからは、現代における“企業と個人の幸せな関係”について考えてみたいと思います。

■心理的契約の内容変更 
日本における企業と個人の関係を改めて振り返ってみると、高度経済成長を前提とした終身雇用制度が、ある種の社会基盤として確立され、微修正を加えながらも維持されてきました。この終身雇用制度は、企業と個人の間で明確な取り決めがなされていた訳ではありません。企業側の「定年まで会社に尽くしてくれるだろう」という期待と、個人側の「解雇されることなく職業人生を終えられるだろう」という期待によって暗黙的に成立していたものです。つまり、企業と個人の“心理的契約”(米国カーネギーメロン大学のデニス・ルソー教授が提唱)によって支えられてきました。多くの人にとって、正社員としてその会社への入社を決めることは、その会社で長く働くことでした。そして、その想定で会社を選ぶ人が多かったと思います。 

しかし、人間の寿命が延び、個人の労働寿命が延びるのに反し、低成長時代の日本における企業寿命が短くなる中で、企業と個人のかつての心理的契約は消滅したと言っても過言ではありません。ミドルシニア世代の社員にとっては、この現実を論理的には理解できるものの、心情的には「話が違う」と感じてしまう人も少なくないと思います。未だ変化の只中ではありますが、現代の心理的契約の内容は、「お互いがどんどん変化していく中で、ニーズが合えば一緒に仕事する。合わなくなれば離れ、また合うときがきたら一緒に仕事をするかもしれない」そんな形に変わってきているように感じます。であるならば、制度の改定だけではなく、企業と個人が心理的契約を結び直すことが必要です。

■共に歩む期間をどのように過ごしていくのか 
心理的契約を結び直すにあたって、企業と個人、それぞれにどんなことが求められるのでしょうか。 

企業としては、パーパスの実現や経営戦略の推進のために、有能かつ自律的な人材に集まってもらいたい。この人材に求める“有能さ”は、各企業によって異なります。当然、自社にとっての理想の人材像や能力要件を設定していると思います。しかし、単なる処遇だけで人材を惹きつけることが難しくなってきていることを考えれば、わが社に属し、共に価値提供していくことになる中長期間で、どのような経験や学習を従業員に提供できるのかを設計することが必要なのではないでしょうか。 

一方、個人としてはこれまで以上に、自分が何をしたいのか、どんな自分でいたいのか、どんな自分になりたいのかを真剣に考えることが求められます。今後は、多くの人が職業人生の中で複数の企業で働くこと(時には同時に)が想定されますので、会社を“一つの器”と捉え、この器をどのように活用できるか、と考えるようにしていくことが必要になります。今ここで自らのキャリア資本をどのように増やしていくのか、という“現代版プロティアン・キャリア”(法政大学の田中研之輔教授が提唱)の発想に転換していくということです。 

これからの“企業と個人の幸せな関係”とは、健全な相互依存関係であり、それをお互いに確認し合って心理的契約を結んでいるということではないかと、私は考えています。 

■旧来の心理的契約の延命でなく、新たな心理的契約へ 
今は至る所で企業と個人の新たな関係性の模索が始まっている時期ではないかと思います。前述のような、健全な相互依存関係をつくっていく前提として、心理的契約=お互いへの期待が変わってきていることをまず現実として受け止めることが必要です。 

その上で、旧い時代の心理的契約を延命する方向ではなく、企業も個人も、お互いにとって幸せな関係を構築する方向を目指して動きながら模索していく。お互いに“選び選ばれる”関係性になっていくならば、一緒にいるときには同じ行き先に向かっているかどうかが大切です。バスの乗車・降車がもっと自然に話し合えるようになっていく、そんな世の中に変わっていくことを想像しています。 

今回は、今、起きている“企業と個人の関係性の変化”について見てきましたが、次回の私のコラムでは、我々自身がインパクトでどんな仕掛けや取組みを行っているか、企業と個人の新たな関係性をつくっていく模索的な取組の一例としてご紹介できればと思っています。 


(Written by Sae、Learning + People Catalyst) 
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